「おしゃれ」より「伝わる」を優先。スマホ時代のクラウドファンディング画像に潜む「視認性」の壁

はじめに
クラウドファンディングの成功を左右する「メインビジュアル(サムネイル)」。制作過程では、時にクライアント様とデザイナーの間で、デザインの方向性が分かれることがあります。今回は、私が実際に経験した「文字のサイズ」を巡るエピソードを元に、スマホ時代のデザイン戦略についてお話しします。
クライアント様の「こだわり」とデザイナーの「計算」
先日担当したプロジェクトで、あるクライアント様から「もっと文字を小さく、繊細でスタイリッシュな雰囲気にしたい」というご要望をいただきました。
ヒアリングを進めていくと、その想いの背景には、商品そのものへの深い愛情がありました。何年もかけて試作を重ねてきた商品で、パッケージや世界観も、海外の高級ブランドを参考にデザインされたとのこと。「文字が大きいと、安っぽく見えてしまうのでは」という不安を抱えていらっしゃいました。
確かに、小さめの文字は余白を活かした美しさがあり、ブランドの高級感を演出するのには最適です。雑誌の広告やパッケージデザインの世界では、この感覚は決して間違っていません。
しかし、私はあえて「文字を大きく、コントラストを極限まで強める」という提案をさせていただきました。

※実際のではありませんが、寄せて作ってます
なぜ、あえて「大きく」するのか?
その理由は、現在の閲覧環境にあります。クラウドファンディングのページを訪れるユーザーの8割以上は、PCではなく「スマートフォン」でプロジェクトを探しています。
物理的なサイズの壁
PCの大きなモニターで見ているときは美しく見える小さな文字も、スマホの数インチの画面では、米粒のようなサイズになってしまいます。
実際に、提案前のデザインをスマホの実機で確認してみたところ、キャッチコピーの文字は読めるものの、「商品名」や「価格」といった重要な情報が、画面の小さな範囲に埋もれてしまっていました。PCの画面で見ていたときには気づかなかった問題です。
「0.5秒」の勝負
ユーザーは画面を高速でスクロールしながら流し読みします。その一瞬で「何についてのプロジェクトか」が脳に飛び込んでこなければ、クリックすらしてもらえません。
これは、SNSのタイムラインを思い出していただくとわかりやすいかもしれません。流れてくる無数の画像の中から、私たちが立ち止まって見るのは、ほんの一瞬で「何かわかる」画像だけです。文字が小さく、デザインが繊細であればあるほど、その「一瞬」で情報が伝わりにくくなってしまいます。

コントラストが生む「強さ」
文字を大きくするだけでなく、背景との明度差(コントラスト)をはっきりさせることも重要です。
特におしゃれなデザインを好む方は、淡い色使いや同系色の組み合わせを好まれます。たとえば「白地にライトグレーの文字」「ベージュに薄いブラウンの文字」のような配色は、確かに上品で洗練された印象を与えます。
しかし、屋外や明るい場所でスマホを見るユーザーにとっては、こうした淡い配色は視認性が著しく低下してしまいます。電車の中、カフェの窓際、晴れた日の屋外など、画面に光が反射する環境では、コントラストの低い文字はほとんど読めなくなってしまうのです。

私はそのプロジェクトで、クライアント様が大切にされている「ブランドイメージ」を守りつつも、スマートフォンの画面上で最も文字が際立つ配色とサイズをミリ単位で調整しました。
具体的には、以下のような工夫を盛り込んだ提案を作成しました。
- キャッチコピーの文字サイズを、当初案より一段階大きくする
- 背景色と文字色の明度差を、淡い配色のままでもはっきり感じられる組み合わせに調整する
- 商品名・価格など「最も伝えたい情報」だけ、太字でひと回り大きくする
「ブランドの雰囲気」と「視認性」は、両立できないものではありません。配色やフォントの選び方次第で、繊細な印象を保ちながら、スマホでもしっかり読める設計にすることは可能です。
結論:デザインの役割と、オーナー様の想い
最終的にこのプロジェクトでは、クライアント様の「ブランドの繊細な世界観を守りたい」という強い想いを尊重し、当初のご希望に近い、控えめで美しい文字デザインが採用となりました。

※実際のではありませんが、寄せて作ってます
デザイナーとしては「視認性(数字)」を優先したくなります。データを見れば、文字を大きくした方がクリック率は上がるかもしれません。しかし、クラウドファンディングは一生に一度の挑戦であることも多いです。
オーナー様が自信を持って、そのページを「自分の分身」として愛せるかどうか。その納得感もまた、プロジェクトを走り抜けるための大切なエネルギーになるのだと、改めて教えられた気がします。
実際、公開後にクライアント様から「このデザインで本当に良かった。自分が誇れるページになった」というお言葉をいただきました。データ上の最適解だけがすべてではない、ということを実感した出来事でした。
これからも、データに基づいた「正解」を提案しつつ、オーナー様の「想い」に寄り添った着地点を見つけていきたいと思います。
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この記事はクラウドファンディングデザイン研究所が制作しました。

