「贅沢」を視覚化する。シャインマスカットとナガノパープル、二つの主役を活かすデザインの裏側

2026.05.11
シャンパンボトルとグラス、緑と黒のブドウのイラスト

はじめに

クラウドファンディングにおいて、食品や飲料のプロジェクトで最も重要なのは「ひと目でその美味しさが伝わること」です。

先日、希少な高級ブドウ「シャインマスカット」と「ナガノパープル」を贅沢に使用した、スパークリングワインのビジュアル制作を担当しました。

ヒアリングの段階で、開発者の方から伝わってきたのは、この商品にかける並々ならぬ想いでした。どちらも市場では高値で取引される高級ブドウ。「片方だけを主役にすると、もう片方の生産者に申し訳ない」「両方の魅力を、同じ熱量で伝えたい」という言葉を聞いたとき、デザインの方向性が一気に固まりました。

二つの主役をどう一枚の画像に収め、その魅力を最大化させたのか。今回は、その制作プロセスの裏側をお話しします。

「左右の対比」で魅せる、贅沢な素材感

今回のプロジェクトにおける最大の課題は、緑の宝石と呼ばれる「シャインマスカット」と、深い紫が美しい「ナガノパープル」という、二つの強力な主役をどう扱うかでした。

最初に検討したのは、ボトルを大きく中央に配置し、ブドウを背景全体に散りばめるデザインでした。しかし、いくつか試作してみると、二つのブドウの色がぶつかり合い、画面全体がにぎやかすぎる印象になってしまいました。「贅沢さ」を表現したいのに、情報量が多すぎて、逆に安っぽく見えてしまうのです。

そこで私は、ボトルを中心に据え、左にシャインマスカット、右にナガノパープルを配置する「シンメトリー(左右対称)」に近い構成を採用しました。

視覚的なバランスの追求

緑と紫という対照的な色を左右に置くことで、画像全体に「安定感」と「華やかさ」を同時に生み出しました。中央のボトルを軸にすることで、視線が自然と「左→中央→右」と移動し、両方のブドウを見落とさずに認識してもらえる構成になっています。

素材のシズル感(瑞々しさ)

滴るような瑞々しいブドウの写真を厳選。あたかもその場で摘み取ったかのような鮮度感を、デザインに落とし込んでいます。撮影された素材の中から、水滴の付き方・粒の張り方を一粒ずつ確認し、最も「美味しそう」に見える写真を選び抜きました。

「補色と明度」で主役を浮かび上がらせる

このワインの大きな個性は、グラスに注いだ瞬間に広がる「ピンク色のスパークリング」と、繊細な「発泡感」です。この淡く美しい色味を際立たせるために、背景のトーンを徹底的にコントロールしました。

ピンクという繊細な色は、周囲に強い色や情報が多すぎると、その存在感がぼやけてしまいます。実際、初期の試作では背景に濃い緑や紫の要素を多く入れていたため、グラスの中のピンクが沈んで見えてしまうという問題がありました。

そこで、背景をあえてニュートラルな色調に抑えることで、グラスの中のピンクがパッと目に飛び込んでくるような視覚効果を狙いました。背景が引き算されることで、主役である「ピンクの泡」が、まるでスポットライトを当てられたように浮き上がって見えるようになります。


プロのこだわり:合成と光の調整

複数の素材を組み合わせて一枚のビジュアルを作る際、最も神経を使うのが「光の向き(ライティング)」の統一です。

バラバラに撮影された素材をただ並べるだけでは、画面の中に違和感が生じ、商品の高級感を損なう原因になります。今回の場合、ブドウの写真とボトルの写真は、それぞれ異なる環境で撮影されたものでした。光の向きが違うまま合成すると、見る人は無意識のうちに「何かが不自然」と感じてしまいます。

  • ブドウに当たる光:左上から差し込む柔らかい光に合わせて、影の向きと濃さを調整
  • ボトルに反射する光:ガラスのハイライトの位置を、ブドウの光源と同じ方向に統一

これらの方向を1ピクセル単位で微調整し、「一つの空間に存在しているリアリティ」を追求すること。この細かな積み重ねが、支援者に信頼されるデザインへの近道となります。

結論:デザインは「価値」を翻訳する仕事

素晴らしい商品には、必ず語るべきストーリーや素材の良さがあります。デザイナーの役割は、それらをただ綺麗に並べることではありません。商品の「価値」を、ユーザーが直感的に理解できるビジュアルへと翻訳することです。

公開後、開発者の方から「二つのブドウ、どちらも主役として見えると言ってもらえた」とご報告をいただきました。「申し訳ない」と感じていた気持ちが、デザインによって解消されたのだとしたら、それはデザイナーとして何より嬉しい瞬間です。

今回のスパークリングワインのように、素材の持つ色や質感を最大限に引き出すことで、プロジェクトの成功を後押しできるデザインをこれからも追求していきたいと思います。


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前回の『視認性』に関する記事はこちら

この記事はクラウドファンディングデザイン研究所が制作しました。

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